ぜろ通信

嘉向徹と保科亮太のブログです。└( ^o^ )┐

金のスコップ、銀のスコップ

 むかしある男が、佐渡の山の中で穴を掘っていました。
 もしかすると、金脈に当たるかもしれなかったからです。
 ところが手が滑って、持っていたスコップを穴に落としてしまいました。
 男は困ってしまい、シクシク泣きました。
 スコップがないと、仕事が出来ないからです。
 すると穴の中から島の神さまが出て来て、ぴかぴかに光る金のスコップを見せました。
「お前が落としたのは、このスコップか?」
「違います。私が落としたのは、そんなに立派なスコップではありません」
 すると神さまは、次に銀のスコップを出しました。
「では、このスコップか?」
「いいえ。そんなにきれいなスコップでもありません」
「では、このスコップか?」
 神さまが三番目に見せたのは、使い古した汚いスコップでした。
「そうです。そうなのですが、実は今まで金脈を探し続けていたので、金のスコップを見た瞬間に心の底から欲しいと思ってしまいました。それだけです。拾って下さってありがとうございました」
「そうか、お前は正直な男だな」
 神さまは感心して、ボロボロのスコップを男に返しました。

 金のスコップをみた男がこの事を友だちに話すと、友だちは不思議がって、
「おれは銀がありそうな山を当たってみるよ」
と、いつも通りの汚いスコップを持って山へ出かけました。
 そして山に登って穴を掘るなり、手を滑らせてスコップを穴に落としてしまいました。
 友だちも困ってしまい、シクシク泣きました。
 そこへ穴から神さまが出て来て、きらきらに光る金のオノを見せました。
「お前が落としたのは、このオノか?」
「違います。私が落としたのは、そんなに立派なスコップではありません」
すると神さまは、次に銀のスコップを出しました。
「では、このスコップか?」
「いいえ。そんなにきれいなスコップでもありません」
「では、このスコップか?」
 神さまが三番目に見せたのは、やっぱり使い古した汚いスコップでした。
「そうです。そうなのですが、実は今まで銀脈を探し続けていたので、銀のスコップを見た瞬間に喉から手が出るほど欲しいと思ってしまいました。それだけです。拾って下さってありがとうございました」
「そうか、お前も正直な男だな」
 神さまは感心して、錆びれたスコップを友だちに返して穴に戻りました。

 素直でありたかった二人の男は、金や銀のスコップをみた事実を確認し合って、夢の実現に向けて大いに盛り上がりました。

 神さまは男たちに、たやすく金や銀を与えませんでしたが、彼らときたらどうでしょう。
 いまや二人は、自分たちの手で金脈と銀脈を掘り当てることに夢中です。
 希望を持って穴を掘り続けることが、彼らにとっての幸福なのでした。