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ぜろ通信

嘉向徹と保科亮太のブログです。└( ^o^ )┐

初編 其の一「選挙漫才」

「天はゼロの上にゼロを造らずゼロの下にゼロを造らず」と言えり。

 これが言いたくて、書いている。一文に込めた意味は、特に無い。しかし、何となく、もう一度読んでみる。なるほど。どうやら案外に理屈でも間違ってはなさそうだ。こちらからの意味付けは無いけれど、このセリフの持つ意味は、もしかすると青天井に広がるかも知れないし、もしかすると深く深く根を伸ばしていくかも知れない。本書は、このように、ふと"ゼロ"と口走ってしまったがために、予期せぬ展開に流れてしまった者たちからの、少しばかりのダイイング・メッセージである。いま、そこにいるあなたに、鼻で笑ってもらえていたら嬉しい。

 

 

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2015年4月10日。嘉向徹と保科亮太は、人の行き交いが多い、夕方の新潟駅万代口の改札前に立っていた。二人お揃いのピンクの薄いジャンパーに、白手を身に着けている。背中には“Go for the children”の文字。何かのキャンペーン中なのかといった様相である。どこか緊張しているようにも見える二人のニコニコ顔が、一層不気味さを際立たせていた。何やら(おしっ)と言って気合いを入れた。二人一斉に威勢良く口を開く。
「はいっ、新潟駅前をご通行中の皆さん、こんばんはー! えー、ただいまの時刻は、午後の6時13分を回りました! 皆さん、本日のお勤めも大変お疲れ様でした!」
 チラッと、待ち合わせ中の人が何人か二人の方を見る。声のトーンが上がっていく。
「いや〜保科さん、いよいよ近づいてきましたね〜、四年に一度のあの日が!」
「おおっ、四年に一度といえばオリンピックですか! いや待てよ、、うーん、リオデジャネイロの風はまだ感じられませんねー、徹さん。」
「違うんですよ、今回はプレミアムなんですよ。しかも明後日が本番! 最近その告知を市内中でやっているんですけど、気づきませんでしたか!?」
「えー、そうなんだ! そうだな〜、、ん! もしかして、お花見イベント!?」
「うわ〜! そっちか〜、逆にそっちは最大のライバルですよ! その前に行くとこありますから! もう、忘れないでくださいよ〜!町内にある掲示板の顔写真見て〜!!」
「掲示板?、そうかそうか思い出しましたよ徹さん!!」
「そう、明後日4月12日の日曜日はー」

『四年に一度の新潟市議会議員選挙の投票日っ!!!』

 二人がパチパチパチと軽く拍手する。
(なんだ、選挙かよ。)という、一つオチがついてしまったかのような空気が辺りに流れる。二人は続けた。
「それは一大事ですね! ところで徹さん、僕ら政治の事とか全然知らない現代っ子じゃないですかー。でも最近ですね、今ちょうど立候補中の方からちょっとだけ政治って何なのか教えてもらったんですよー。」
「おお、ぜひ教えてください。」
「例えばですね、そこにある駅のゴミ箱。まずは、僕らがゴミを捨てた後に、サービスでそのゴミを集めてくれている人がいますよね。さらにその後にゴミ収集車が現れてクリーンセンターとかに運んでいってくれますね。そしてまた燃やしたり再生させたり何だりがはじまります。この一連の流れ、元を正せば“政治”によって決められているんだそうです。」
「へ〜、そんなこと、考えたこともなかったです!」
「もう一つ。いま徹さんこんな感じで元気にやってますけど、おっと、いきなり胸が苦しくなりました、はい、どうしますか?」
「うう、だ、誰か。。きゅ、救急車を…」
「そうですねー! ここで徹さんが突然倒れたら誰かがそれを見つけて救急車を呼んでくれます。そしてピーポーピーポー運ばれて気づいたら集中治療室、ああ俺はなぜここに、ああそうかそう言えば…なんて思っちゃったりして一命は取り留めて病院にステイしちゃえる訳ですよねー! 実はこれも元を正せば“政治”によって決められているんですって!!」
「それはすごいな〜、助かるわぁ。でも、そんなことしているなんて皆さん知らないですよね?」
こいつら何なんだという顔で、二人をまじまじと見つめるリーマンふう男性。やや後方で何となく暇つぶしに聞いているふうなカップル。二人は気にせず続ける。
「そう! それこそ政治を行う議員さんの身のこなし方なんです! 彼ら彼女たちは、あたかも自分たちは何もやってませんよーくらいの謙虚さを持って僕らの生活に関わるほとんどの事を決めてくれているんですって! だって市民の皆さん、国民の皆さんのおかげで自分たちがこうして働けるのですから。って、ホントに腰の低い方々なんですわー。」
「なるほど、つまりこういう事ですね、『あの暑い夏の日、野球大好き保科少年が疲れ切ってベンチに腰掛けて一息ついたその瞬間、「ハイ、これ。」と笑顔でフワッと良い匂いのするタオルを渡してくれた、あのマネージャー。』という感じでしょうか!?」
「ざ、ザッツライッ!! 議員さんはみんなの浅倉南的なマネージャーなんですっ!(俺ほぼ男子校だったけども‼︎泣)」
周囲の怪訝そうな表情と逆に、二人の熱は上がっていく。
「と、いうことで、ですねー。今回は四年に一度の浅倉南、AKM選抜総選挙なワケですよ! だから早くチケット手に入れてねー!って話なんですよ。」
「そういう話だったんですね〜! やっと南辺りから話の流れが掴めましたー。でも、あれですよね、四年に一度っていうくらいなんですから、こっちの方、お高いんでしょう?」
徹が小さく親指と人差し指をくっつけて見せる。
「そうですよね、奥さまっ! 一番気になるそのお値段! なんとなんと今回は公の場でお政(まつりごと)ということで、皆さんから普段頂いている有難い有難い“税の金”を、ここぞとばかりに使わせていただきます!!」
「わーい! 私たちの四年間貯めたポイントが、一気に使えるのね〜!!」
「そう、今回の新潟市議会議員選挙の投票権! ご自宅への送料、その他諸々の手続きも含めましたお値段がなんとなんとー…」

二人が両手を大きく振りかぶって叫んだ。

 

『ゼロッッッ!!!!!』

 

team-0が誕生した瞬間だった。